プレスリリース・研究成果

金属らせん磁性体におけるらせんの巻き方の制御に成功 ‐磁気メモリなどへの応用に期待‐

2020/03/31

発表のポイント

  • らせん磁性体は、磁気モーメントがらせん状に整列している物質でらせんの巻く向きに右回り、左回りの自由度があります。
  • 電流と磁場を平行にかけるか反平行にかけるかで、らせんが右回りになるか左回りになるかを制御できることが明らかになりました。
  • 金属中のらせん磁気秩序の向きをそろえたのは初めてで、この原理を利用した磁気記憶デバイスなどへの応用が期待されます。

概要

 東北大学金属材料研究所の小野瀬佳文らと東京大学大学院総合文化研究科の大学院生の蒋男は、金属らせん磁性体のらせんの巻く向きを、電流と磁場を使うことで初めて制御することに成功しました。
 
 磁気モーメント(磁性の強さとその向きを表すベクトル量)が整列した磁性体には整列の向きの自由度があり、これが磁気メモリなどに活用できることから、その制御法については多くの研究がなされてきました。特に、磁気モーメントが一方向にそろった強磁性体では多くの研究がなされており、その一部は磁気メモリに応用されています。最近では、磁気モーメントが、例えば、上下上下上・・・・のように反平行にそろった反強磁性体でも、その自由度(“上下”か“下上”か)を制御する研究が多くなされるようになってきました。
 
 本研究では、らせん磁性体において磁気モーメントがつくるらせんの巻き方を電流と磁場を使って制御することに成功しました。絶縁体では巻き方を制御する方法は知られていましたが、金属中で巻き方を制御したのは初めてです。今後、磁気メモリなどへの応用が期待されます。本研究の詳細はNature Communicationsに2020年3月30日に掲載されました。

 詳細1: プレスリリース本文 [PDF:660KB]

 詳細2: Nature Communications  [DOI:10.1038/s41467-020-15380-z]

電流と磁場によるらせん磁気構造の巻き方の制御。電流、磁場が平行か反平行かによって巻き方が変わる