プレスリリース・研究成果

スピン流を高効率で輸送できる新たな材料を発見 スピントロニクスの常識を覆す

2019/10/21

発表のポイント

  • 常磁性絶縁体ガドリニウムガリウムガーネットが、長距離かつ高効率にスピン流を運ぶことを実証した。
  • 従来スピン流輸送に必要と考えられていた磁気秩序に頼らず、微弱な原子磁石の間の相互作用だけで絶縁体中をスピン伝播できることがわかった。
  • 磁気秩序物質(強磁性・反強磁性)を主な研究対象にするスピントロニクス分野で、磁気秩序のない物質群(常磁性)を利用する可能性を示した。

概要

 東北大学金属材料研究所の大柳洸一氏(大学院博士課程)、Gerrit E. W. Bauer(ゲリット バウアー)教授、東北大学材料科学高等研究所の高橋三郎研究員、東京大学大学院工学系研究科の齊藤英治教授(東北大学材料科学高等研究所・金属材料研究所兼任)らは、スピントロニクス材料として利用することが難しいと考えられていた常磁性絶縁体ガドリニウムガリウムガーネットが、スピン流を伝播する有用な材料になりうることを実証しました。

 本研究成果は2019年10月18日(金)に英国科学誌「Nature Communications」オンライン版で公開されました。

詳細

 

強磁性体(a)と常磁性体(b)におけるスピン流伝播のイメージ図:強磁性体ではその磁石の性質から、スピンの方向が一方向に揃っていることで、スピン流を伝播できる。一方で常磁性体では、スピンの向きがバラバラで、従来はスピン流を十分に伝播できないと考えられていた。