プレスリリース・研究成果

最古の金属ガラス原子の並び方に特徴を見つける ―国際的な放射光X線・中性子実験と最新のデータ解析から明らかに―

2019/09/03

発表のポイント

  • バルク(塊)状として最も古く得られた金属ガラスであるPd40Ni40P20の原子の並び方に、ガラスになりやすい特徴を見出しました。
  • 実験はフランスにある放射光施設や中性子源を用いて、日仏独英の共同で行いました。
  • 得られた実験結果は、日本あるいはハンガリーで開発したいくつかの最新のアルゴリズムを用いて解析を行いました。

概要

 東北大学金属材料研究所の加藤秀実教授は、熊本大学の細川伸也教授およびラスロー・プスタイ客員教授(ハンガリー科学院より併任)、フランス・国立科学研究センター(CNRS)、ドイツ・マールブルク大学、物質・材料研究機構(NIMS)、新潟大学、フランス・ラウエ・ランジュバン研究所(ILL)およびイギリス・バース大学の研究者と協力して、放射光X線を利用したX線異常散乱実験および強力中性子源を用いた中性子回折実験を行うことにより、最も古くバルク状で得られたパラジウム・ニッケル・リン系金属ガラスPd40Ni40P20の原子の並び方の特徴を捉えることに成功しました。実験データの解析には、逆モンテ・カルロ法、ボロノイ解析およびパーシステント・ホモロジー法などの最新のアルゴリズムが利用されました。

この研究により、なぜ金属原子が結晶として整列せず、ランダムに並ぶガラスとなり得るのかという、これまであいまいであった特徴をあぶり出すことができました。また、これまで経験的にしか語られることがなかった、ガラス形成能(ガラスになりやすさ)に一定の指針を与えることができ、今後の金属ガラスの新規材料開発に新たな指針を与えるものとして期待されます。

 本研究は文部科学省科学研究費補助金基盤研究(C)、科学技術振興機構CRESTおよびPRESTO、東北大学金属材料研究所全国共同利用共同研究の支援を受けて実施されたもので、科学雑誌「Physical Review B」に令和元年8月28日(米国東部時間)に掲載されました。

 

詳細

 

図:得られたPd40Ni40P20金属ガラスの原子配列