プレスリリース・研究成果

球状カゴメ物質の特徴的な低エネルギー励起が明らかに

2019/02/27

著者(所属):

木原工(東北大学金属材料研究所)
野尻浩之(東北大学金属材料研究所)
鳴海康雄(大阪大学大学院理学研究科付属先端強磁場科学研究センター)
大島勇吾(理化学研究所)
金道浩一(東京大学物性研究所)
C. Heesing(Bielefeld大学)
J. Schnack(Bielefeld大学)
A. Muller(Bielefeld大学)

発表概要

 東北大学金属材料研究所の木原工助教、野尻浩之教授は、大阪大学先端強磁場科学研究センターの鳴海康雄准教授、理化学研究所の大島勇吾専任研究員、東京大学物性研究所の金道浩一教授、Bielefeld大学(ドイツ)のHeesing博士、Schnack教授、Müller教授らと共同で、球状カゴメ物質の特徴的な低エネルギー励起を実験的に明らかにしました。
 カゴメ格子反強磁性体では、磁性元素を結んだ三角形が2次元平面内で頂点共有しており、その幾何学的特徴によって最低エネルギーを与えるスピン配置を1つに決めることができません。これは幾何学的フラストレーションと呼ばれ、これによって増大した量子揺らぎが低温で量子スピン液体等の非自明な量子状態を実現させると期待されています。
 球状カゴメ物質{Mo72V30}および{Mo72V30}は、30個のVイオンが20・12面体を形成し、それぞれのVイオンが電子スピンを1つずつ持った反強磁性体です。頂点共有した三角形が1つの球を形作る点で2次元カゴメ格子の類似物質と見なすことができ、低温でどのような量子状態が実現するのか興味が持たれています。現在のところ、最低エネルギーでは、2つの電子スピンが反平行になってペアを組む一重項状態が実現していると考えられていますが、ペアの組み方の違いから生じる多数の一重項状態や部分的に一重項が壊れた多重項励起状態がエネルギー的にどう分布しているのかは未解明でした。本研究によって、最低エネルギー近傍に多数の一重項励起状態が存在していることが実験的に示されました。本研究成果は、幾何学的フラストレーションの作る多彩な量子状態の理解に貢献すると期待されます。

本研究成果は、2019年2月22日発行の米科学雑誌「Physical Review B」に掲載されました。

 詳細1: Physical Review B ウェブサイト [10.1103/PhysRevB.99.064430]

 

(a) 30個のVイオンの作る20・12面体. (b) 理論計算によって得られたエネルギー準位. (c), (d) 本研究によって得られた比熱の温度・磁場依存性.

(a) 30個のVイオンの作る20・12面体. (b) 理論計算によって得られたエネルギー準位. (c), (d) 本研究によって得られた比熱の温度・磁場依存性.