東北大学金属材料研究所磁気物理学研究部門の木俣基准教授と首都大学東京、理学研究科物理学専攻の星和久大学院生、水口佳一准教授らの研究グループは、ビスマスカルコゲナイド系(BiCh2系)層状超伝導体の単結晶を用い、強磁場中での超伝導特性評価を行った結果、結晶構造の回転対称性を破った特異な異方性を示すことを発見しました。
BiCh2系層状超伝導体は2012年に水口佳一准教授らが発見した新しい層状超伝導体であり、非従来型の機構による超伝導発現が予想されています。今回研究に用いたLaO0.5F0.5BiSSe単結晶は正方晶構造であり4回回転対称性を有しますが、超伝導状態での磁気抵抗率測定からは結晶の回転対称性を破った2回回転対称性が観測されました。超伝導状態での結晶回転対称性の破れは、鉄系超伝導体やトポロジカル超伝導体などで提案されているネマティック超伝導状態の特徴と共通するものであり、BiCh2系超伝導体とネマティック超伝導状態が関連している可能性があります。今後、今回観測した現象を詳細に解明することで、新しい機構による超伝導体の設計指針が見出されると期待されます。
発表のポイント
- BiCh2系超伝導体において強磁場中抵抗率の面内異方性を測定
- BiCh2系超伝導において結晶回転対称性を破った異方性を観測
- 最近注目を集めるネマティック超伝導との関連
本研究成果は、2019年3月1日で「Journal of the Physical Society of Japan」にオンライン掲載されました。
詳細1: プレスリリース本文 [PDF:357KB]
詳細2: Journal of the Physical Society of Japan ウェブサイト [10.7566/JPSJ.88.033704]
図1. BiCh2超伝導体の結晶構造と超電導状態の異方性
(a) 正方晶構造での結晶構造(BiCh伝導面)の4回回転対称性。 (b) 強磁場中電気抵抗率測定の結果から得られた超伝導状態の異方性(上部臨界磁場の強弱を示している)。