RESEARCH ACTIVITY

磁性強誘電体における熱の整流効果を世界で初めて観測 -エネルギーの有効利用への貢献に期待-

発表のポイント

  • 磁気モーメントが秩序化し、なおかつ電気双極子も一方向に配列し強誘電性を示すマルチフェロイクスと呼ばれる物質における新奇な現象を確認しました。
  • 磁化(磁気モーメントの平均)と電気分極(電気双極子の平均)が垂直な方向を向いていているとき、これらの両方に垂直な方向で熱の流れが整流されることが分かりました。
  • 熱の通りやすい方向は電場や磁場によって制御できるので、省電力の温度制御などエネルギーの有効利用に貢献することが期待されます。

概要

 これまで、二つの物質の接合などでは熱の整流現象の観測がなされていましたが、一様な物質で熱の整流が観測された報告はありませんでした。東北大学金属材料研究所の小野瀬佳文教授、東京大学大学院総合文化研究科大学院生および東北大特別研究学生の廣金優二(現在日立金属)らは、磁性強誘電体において熱の整流効果を世界で初めて観測しました。磁気モーメントが秩序化してなおかつ電気双極子の方向もそろっている磁性をもった強誘電体はマルチフェロイクスと呼ばれます。本研究では、マルチフェロイクスにおいて、磁化(磁気モーメントの平均)と電気分極(電気双極子の平均)が垂直な方向を向いていているとき、これらの両方に垂直な方向で熱の流れが整流されることを明らかにしました。本研究成果は、省電力の温度制御などエネルギーの有効利用へ貢献することが期待されます。
 本研究の詳細はScience Advancesに2020年9月30日(米国時間)に掲載されました。
 

詳細

 
 

図1 磁性強誘電体(マルチフェロイクス)における熱流の整流効果。電気分極と磁化が垂直のとき、その両方に垂直な方向に熱流の整流効果が現れる。電気分極や磁化を反転すると熱の通りやすい方向も逆になる。