RESEARCH ACTIVITY

核スピン由来のスピン流を世界で初めて検出 ―スピントロニクスに新たな可能性―

発表のポイント

  • 原子核の自転運動であるスピン(核スピン)から生じるスピン流を電圧として検出することに世界で初めて成功しました。
  • 従来、伝導電子やスピン波が主な研究対象だった次世代エレクトロニクス ・スピントロニクスに核スピンをも利用できる可能性が示唆されました。

概要

 東北大学金属材料研究所の塩見雄毅助教(現 東京大学大学院工学系研究科特任講師)とヤナ・ルスティコバ氏(大学院博士課程・日本学術振興会特別研究員)、東北大学材料科学高等研究所の齊藤英治教授(現 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授兼任)らは、原子核の自転運動であるスピンの共鳴運動から生じたスピン流の検出に成功しました。この成果により、従来、金属中の伝導電子や強磁性体中のスピン波が主な研究対象となっていたスピントロニクスという固体素子研究に、核スピンを取り入れる可能性が拓かれました。

 本成果の詳細は、2018年10月22日に「Nature Physics」でオンライン公開されました。

 詳細1: プレスリリース本文 [PDF: 493KB]

 詳細2: Nature Physics ウェブサイト [http://dx.doi.org/10.1038/s41567-018-0310-x ]

 

実験のセットアップの模式図(左)と、核スピン波の概念図(右) MnCO3にPtが成膜 された試料に、ラジオ波を照射する。

実験のセットアップの模式図(左)と、核スピン波の概念図(右) MnCO3にPtが成膜 された試料に、ラジオ波を照射する。核磁気共鳴が起きた時に、Pt層に生じる電圧を測定する。核スピンは超微細相互作用 を通じて電子スピンと結合している。電子スピンにスピン波の励起が存在すると、電子スピン波を介して核スピンの間に実効的な相互作用(Suhl-Nakamura相互作用) が働く。この相互作用によって核スピンと電子スピンが結合した核スピン波が生じ、スピンポンピングが生じると考えられる。