つとめてやむな 金研若手研究者インタビュー 「努めて止まない」若手研究者に聞く
新素材共同研究開発センター  准教授 梅津 理恵(右)、助教 吉年 規治(左)

vol.2今に生きる大学院での学び

新素材共同研究開発センター(以下新素材センター)は、新素材の開発を目的とした研究に取り組む金研の附属施設です。
今回は新素材センターの梅津准教授と吉年助教に、大学院生時代の研究生活と研究者を目指したきっかけを伺いました。
新素材センターのWebサイトはこちらをご覧ください。)

新素材の開発に取り組む研究者

―お二人がご所属されている新素材センターはどのような所ですか。

梅津)私たちは新素材の開発を目的にさまざまな研究に取り組んでいます。また共同利用施設ですので、実験装置を利用しに来る所外の研究者の方もたくさん訪れます。

吉年)異分野の方と関わる機会が多いので、とても刺激があります。同じ実験装置を使っていても研究の対象や目的が異なるので、「この装置をこのような研究目的で使うことが出来るんだ」など新しい発見があります。

―取り組まれている研究内容を教えてください。

梅津)主なテーマのひとつはホイスラー合金の物性解明です。ホイスラー合金は数種の元素が規則的に配列した合金で、組み合わせる元素やその比率、配列の仕方によってさまざまな機能を示します。私の研究の目的はスピントロニクス*1 材料に最適な性質を示すホイスラー合金を見つけることです。理論上は理想的な合金と予測されていても、実際に作製してみると全く異なる性質を示すことがあります。理論で示された性質を実際の物質が本当に有しているのかを実験で確かめながら、より最適な材料となる元素の組み合わせを調べています。理学と工学の境界を研究しているという感じです。

吉年)私は鉄系金属ガラスの作製と加工プロセスの技術開発に取り組んでいます。鉄系金属ガラスは変圧器などに使われる軟磁性材料*2 でもあり、また、強度や磁気特性に優れているといった特徴を有しているため、工業的応用が期待されています。一方、アモルファス*3 構造が維持されにくく、加工しにくい欠点があります。そこで私は「無容器凝固法」という方法を発展させて、金属ガラスを複雑なマイクロ部品に粘性流動加工する技術を開発しました。将来この技術を産業へ応用できるよう研究を進めています。

今も生きる、大学院での研究

―梅津先生は修士課程まで理学部、博士課程は工学部に進学されたそうですね

梅津)女子高だったので物理を好んで学ぶ人は少なく、自分は物理が得意だと勘違いして奈良女子大の理学部物理学科に進みました。共学の高校に行っていたら、どのような選択をしたのかな、と思うことがあります。大学で専攻を決めるときには、理論よりは実験、そして一人で黙々と実験できる物性物理学の講座にしようと思い、3K(きつい、汚い、くらい)といわれていた研究室をあえて選びました。そこまで言われるならいってみよう!と。

吉年)おおお!

梅津)博士課程は先生のアドバイスもあり、東北大の工学部、その中でも基礎をやっている所にしようと金研ご出身の深道先生の研究室を選びました。厳しい先生で、学会のプレゼンは本番のほうがよっぽど楽と思うくらい練習でこてんぱにされたりもしましたが、大変鍛えられました。

新素材共同研究開発センター 准教授 梅津理恵

―吉年先生は修士課程を金研で学ばれたようですが、はじめから材料研究をしようと思っていたのでしょうか。

吉年)材料をやりたいと思っていたわけではないのですが、高校生の時から工学の基盤となる分野に進みたいとは考えていました。材料といえば金研ということは知っていたので東北大に進学、修士のときに新素材センター(当時:金属ガラス総合研究センター)にあった展示をみてここを選びました。金属ガラスが開発から最終製品になるまでの過程が一覧になっていたんです。研究のイメージがわいて、非常にワクワクしたのを覚えています。

梅津)博士課程では違う分野に進んだのですか。

吉年)そうですね。金研では材料の本質について学び、博士課程では材料の加工プロセスの研究に取り組みました。2つの分野で学んだことは今の研究に活かされていて、無容器凝固法を用いて作製した急冷材の加工技術もこの経験があったからこそ開発にいたりました。

新素材共同研究開発センター 助教 吉年規治

―お二人とも大学院での研究生活が今日まで強く影響しているんですね。

梅津)どこの研究室を選ぶかは大切ですよね。将来を左右する場合もあるかもしれませんし。

吉年)そう思います。

梅津)自分にあっている研究室を探すのも、能力の一つだといわれたことがありますが、今から研究室を選ぶ学生さんはぜひじっくり考えて選んでほしいと思います。

常に新しいものを追い求めて

―研究者になろうと決めたきっかけはありますか。

梅津)物性物理を専攻した時点で研究者になると漠然と思っていましたが、「大学の研究は全く同じ日がくることはない。常に新しいことを追うからだ。」という恩師の言葉にぐっときて、大学の研究者になることを決めました。

吉年)僕は明確なきっかけがあったというよりも、こうやったらどうか、次はこうだ、を繰り返して、気がついたら研究から手が離せなくなっていました。子どもが生まれてだんだんと親になるように、研究を続けていくことで少しずつ研究者になっているように思います。



新素材共同研究開発センター 准教授 梅津理恵、助教 吉年規治

―最後に今後の展望を教えてください

梅津)スピントロニクス材料になりそうなホイスラー合金は電子状態に特徴があるのですが、今までは間接的に示されたデータから議論するしかありませんでした。しかし昨年、放射光を使うことで磁場中でも電子状態を直接測定する方法を確立したので、これを有用な手段として世の中に発信していくつもりです。

吉年)まずは提案している無容器凝固法を用いて作製した素材が工業的に応用できるようになり、鉄系金属ガラスが最終製品として実用化されるのを見たいです。将来的にはこの技術を金属ガラス以外、例えば結晶材料などに応用し、加工プロセスの新たな可能性を探れたら面白いと考えています。

―どうもありがとうございました。

注釈

インタビュー 情報企画室広報班(横山)