つとめてやむな 金研若手研究者インタビュー 「努めて止まない」若手研究者に聞く
量子ネルギー材料科学国際研究センター  准教授 外山 健(左)、助教 仲村 愛(右)

vol.1研究者としての原点、大洗センターの魅力

量子エネルギー材料科学国際研究センター(以下大洗センター)は茨城県北部に位置する金研の附属施設です。
原子力材料の開発・基礎研究や、アクチノイド系元素の物性解明の研究などが行われています。
今回は大洗センターに所属する外山准教授と仲村助教に、大洗での研究と研究者を目指したきっかけを伺いました。
大洗センターのWebサイトはこちらをご覧ください。)

―大洗センターでの研究生活はどのくらいになりますか

外山)修士1年から大洗センターに配属し、准教授になった今年で14年目になります。学生のときは仙台を希望していたのですが、まさかこんなに長くいることになるとは思いませんでした。

仲村)私は2015年に着任し2年目になります。博士3年の時に夏の学校にも参加していました。大洗は沖縄と似ていて住みやすいです。

外山)沖縄と似ているのはうそでしょう!

仲村)いやいや、海も近いし、車社会なので共通点は多いですよ。

外山)僕は仙台のように、職場の近くで気軽に飲んだり食べたりできる環境があったらいいなと思います。

大洗センターを支える 2つの研究分野

―それでは取り組まれている研究について教えてください

外山)原子力で使われる金属の照射後試験を行っています。通常の環境下だったら100年使えるような金属でも、原子炉の中で中性子照射されると、1年もしないうちに脆くなったり錆びたりします。私はこの照射による材料の劣化を原子レベルで調べています。具体的には、TEMやアトムプローブを使って、中性子照射による原子構造の変化、欠陥の解析をしています。

仲村)私は、ウランやトリウムなどのアクチノイド化合物の結晶作製とその物性の解明も行っています。アクチノイド化合物は、他の金属間化合物には見られない特殊な性質を持っています。非従来型超伝導がその一例ですが、原理はまだ分かっていません。アクチノイド化合物が示す不思議な現象とその原理追求をしています。

―大洗センターの2本柱である照射後研究とアクチノイド研究の各分野で研究を進めていらっしゃるのですね。お二人が研究者を目指されたきっかけはありますか

外山)私は学部生時代の研修で配属した長谷川先生の影響が大きいです。当時助教だった永井先生も今以上にエネルギッシュで、こんな面白い人たちが夢中になる研究はきっと面白いんだろうな、と思い研究者の道に進みました。照射後実験もやり進めると興味がどんどんわいて、いろいろな巡りあわせで今があると思います。

仲村)私は学生のときに扱っていたユーロピウム化合物の物性にとても興味を惹かれました。ユーロピウムは価数が不安定な物質で、磁場や圧力によるチューニングの過程で超伝導が起こるのではといわれています。未知の現象を追及したい一心で、博士課程まで進みました。今は対象がアクチノイドに変わりましたが、基本的なプロセスは変わっていません。

助教 仲村愛

―大洗センターならではの特徴は何でしょうか

外山)放射後試験の研究施設として、一か所にすべての実験設備が集積しているところです。扱いが大変な放射性物質を、ホットラボからすぐ隣の研究棟に移動して、TEMやアトムプローブで詳細に解析できるところは、世界的に見ても大洗センター以外にありません。

仲村)日本でなかなか扱えない放射性物質を使って試料を作製し、それをすぐに強磁場や極低温など極限下で測定できるのですから、恵まれた環境であることを実感しています。

准教授 外山健

なってからわかった、 研究者の仕事の深さと幅広さ

―研究者になってから大変なこと、変わったことはありますか

外山)新しいことを思いついても、ほとんど過去にやられてしまっているということが、研究を進めるうちにどんどん分かってきました。原子力黎明期の先生方は本当に優秀な研究者だったことを痛感させられます。どの分野でも同じなのでしょうが、自分で新しい研究を見つけていくことの大変さを身にしみて感じています。

仲村)夏の学校では受け入れる側として学生に教えるなど、研究以外のことをやらなければならなくなったことで、仕事という意識が芽生えました。研究に関しては学生のときとあまり変わらず楽しく続けています。

―将来の展望を教えて下さい

外山)原子レベルのミクロな解析も、脆性などのマクロな解析も昔から行われていました。しかし両者の間は、ここに欠陥があるから、硬くなったんだろうという推察で、なんとなくしか結びついていません。これはミクロな所がまだまだ分かりきっていないからだと思います。今だからこそできる微細構造解析を突き詰め、新しい発見をしていきたいです。

仲村)私は試料作製が課題です。研究には純良な単結晶が必要ですが、その作製にまだ試行錯誤しています。一見きれいに見える単結晶でも、不純物が入っていたり。。純良な試料を作れるようになって、どこにいっても研究ができるようにがんばりたいと思います。

分野を超えた交流を

―最後に大洗に対する要望を教えて下さい

外山)旅費を上野経由で出してほしい。

仲村)設備が古いので、新しくしてほしい。

―切実ですね(笑)ほかにはありますか

外山)要望というわけではないのですが、たまに仙台に行くと研究者がアグレッシブで切磋琢磨している感じがします。それに比べると大洗はのんびりしています。仙台の雰囲気が大洗にも伝わるといいですね。

仲村)もっと多くの人に大洗に来てほしいです。学生や研究者との交流を増やしたいです。

外山)逆に言えば教員も技術職員もなく、また外部の業者も一緒になって研究に取り組めるのが大洗の強みですね。いろいろな人の協力があって実験がしやすい環境です。 あとは材料照射研究とアクチノイド系研究両者の交流がもっとあるといいですね。分野も法律も全く違うので難しいとは思いますが、研究の面でも何かしらのコラボレーションができればよいと考えています。

―どうもありがとうございました。

インタビュー 情報企画室広報班(横山)

※教員の所属およびインタビュー内容は取材当時のものです。

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