三井金属鉱業株式会社 事業創造本部 総合研究所
東北大学大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻博士前期課程修了(2021年) 金属材料研究所 非平衡物質工学研究部門(加藤研究室)
金属材料研究所(金研)は、材料科学の基礎から応用にわたる教育活動を展開し、これまで多くの優秀な人材を輩出してきました。今回は金研のOB(2021年修士卒、加藤研究室)であり、現在三井金属鉱業株式会社でご活躍されている中村祐さんに加藤研究室の阿部と村田がお話を伺いました。
現在は燃料電池用触媒の研究開発に携わっています。15〜20人程度の研究グループに所属していて、活性の高さと耐久性を兼ね備えた触媒を作ることを目標にしています。自分で手を動かすのも好きなので、研究計画書の作成以外にも、自分で実験を進めることも多いです。個人の裁量がとても大きいので、自分の考えや意見を基に研究を進めることができる環境だと思います。
自分の意見や発想をすぐ具現化できるところが面白いと思います。具体的には、自分で調査・計画・実験を行うことで新しい材料を作れるところですかね。また、周囲のサポートがとても手厚いため、難解な分析などに関しては専門のチームに依頼することでどんどん実験が進められる環境なのも心強いですね。
特許をひたすら調べるのが一番大変でした。研究内容が燃料電池用触媒なので、世界各地の競争が激しく、特許が無数に存在しているので一つ一つ調べるのがとても大変でした。
大学・大学院の専攻が仕事に直結しそうで、どの事業分野に配属されても面白そうだと思ったことです。また、元々興味があった機能性材料に会社として力を入れていたことも入社のきっかけになったと思います。
金属溶湯脱成分法(※1)を用いたナノポーラス金属間化合物の作製に関する研究を行っていました。脱成分時に発現する微細組織や結晶構造などからそれらの形成メカニズムを考察する研究でした。液体リチウムを使うなど実験がかなり特殊だったため、実験用の小物や装置は自作していました。
※1:金属同士の混ざりやすさを利用して、触媒などに用いられる多孔質な(材料内部に無数の孔が存在している)材料を作製するプロセス。
行事面では夏のビアパーティですね。研究室の垣根を超えて、色んな人と飲んだり話したりしてとても楽しかったのを覚えています。研究に関して言うと、ありとあらゆる実験装置が揃っていることですね。
実験装置が信じられないほど豊富で、実験し放題なところです。また、先生同士のネットワークが広く、繋がりがとても親密だったため、金研内外のさまざまな装置を借りに行ったり相談しに行ったりできることもよかったと思います。あとは、イベントが豊富なことだと思います(笑)。
研究スキルや座学で得た知識が、今もそのまま役に立っていると思います。今の業務が大学院生活の延長と感じるくらい知識や経験を積ませてもらったので、会社に入ってから新しくやった勉強がそんなにないくらいに活きていると思います。実際に会社で行っているのは加藤研での研究とは異なる内容ですが、授業などで触れたことがある分野が多いためすんなりと頭に入ります。
目的の違いが一番明確な違いになると思います。金研では全く新しい発見をすることがメインで、ある意味採算度外視で、ありとあらゆる手段を使って研究を行いました。研究設備が世界トップクラスなので、どんな実験も解析もできたのはとてもよかったと感じています。一方、企業研究のゴールは売って利益を稼ぐことです。量産可能性がありそうな文献を参考に、スケールアップなどを考えていきます。また、ゼロベースの研究というより、文献のトレースや組み合わせからスタートすることが多い印象です。
私は地元が仙台で、東北大学への進学は元々考えていました。また、その中で工学部の中でも材料科学を専門的に学ぶことができる材料科学総合学科に進学しようと思いました。
高校でフェンシングをやっていたことだと思います。フェンシングで使われる金属の剣はとてもしなやかですが、1年ほど使っていると折れてしまう。なぜこんなにしなやかなのか?なぜ折れてしまうのか?折れをなんとか防止することはできないか?など色々気になることがあり調べ始めたのが材料に興味を持ったきっかけです。
また、胴に着用する「メタルジャケット」という金属繊維が織り込まれた導電性のあるベストを着るんですが、汗で錆びていずれは使い物にならなくなってしまうんですね。錆を落とせないかとクエン酸や重曹で洗ったり、小学生の時に買った顕微鏡を使って観察するなどしたことで、材料科学に興味を持ちました
とにかく研究を続けていきたい、可能なら博士号を取りたいと考えています。修士卒業後に就職した選択に後悔はありませんが、博士過程に進学したらもっと研究に没頭できたと思うと少し惜しいことをしたと思っています。
研究環境がものすごく整っていると実感しました。色んな実験をさせていただいて、それによって現在の仕事での苦労が無く日々過ごすことができていると思います。
革新的な材料は世界をひっくり返すことができます。開発者として歴史に名を残すチャンスがあるわけで、日々の実験がわくわくの連続です。モノづくりの連続なので手を動かすことが好きな人にはとっても楽しいお薦めの学問です。
ABE
MURATA
2024年1月インタビュー 加藤研究室 (阿部、村田)
三井金属鉱業株式会社 事業創造本部 総合研究所
東北大学大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻博士前期課程修了(2021年) 金属材料研究所 非平衡物質工学研究部門(加藤研究室)
※所属はインタビュー当時のものです。