学生によるインタビュー

社会で活躍する卒業生

02 伊奈 幸佑 さん

材料科学の基礎から応用にわたる教育活動を展開する金属材料研究所は、これまで多くの優秀な人材を輩出してきました。今回は金研のOB(2017年修士卒、高梨研究室)であり、現在日本ガイシ株式会社でご活躍されている伊奈幸佑さんに高梨研究室の市村と松木がお話を伺いました。

 
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大学で学んだ知識を生かす

Chapter 1.
企業で働くこと。大学で学んだ知識が使える面白さ
日本ガイシで取り組まれている業務について教えてください。

入社から3年間は金属事業部の開発部に所属し、新材料の銅ジルコニウム合金の開発をしていました。入社4年目の今年、生産技術部に転属となり、製造ラインの生産能力向上やコストダウンに努めています。

コロナ禍でオンラインが中心になって、業務に変化はありましたか。

在宅勤務の実施、会議のオンライン化等、働き方は大きく変わりましたが、業務内容に変更はありませんでした。

開発と生産技術を両方経験されているということで、2つの職種の面白さを感じる点を教えてください。

開発部の面白さは誰もやったことがないことをやるというところにあります。一方、生産技術部は自分が会社にどのくらい貢献しているのか数値で見れる楽しさがあります。また両方の職種に言えることとして、大学で学んだ知識を仕事に活かせる楽しさがあります。

大学の研究を踏まえ現在の仕事を目指した経緯というのはありますか。

材料屋として働きたいということで広くいろんな企業を見ていたので、研究室でやっていたことはあまり気にしませんでした。

大学と会社でのギャップに関してはどう感じていますか。

開発部にいた3年間は研究室生活との差は感じませんでした。目標に向かってトライ&エラーを繰り返す点や、世の中のために研究を行う点は研究所も会社も変わらないです。

Chapter 2.
研究経験を社会で生かす。若手も意見を求められる環境
大学院で金研に進まれた理由を教えてください。

磁性材料の研究に携わりたくて、高梨研究室(金研)を選びました。元々、苦手意識のあった磁性分野ですが、敢えて専門的に扱う研究室に入ることで克服したいと思っていました。またここで苦手を克服することで、自信を持って社会人生活を送れるのではないかと思いもありました。

こちらからの質問ですが、市村さんと松木さんはどうして高梨研究室を選びましたか。

市村 : 私は学部時代、セラミックスを主に扱う研究室に所属していました。卒業研究で磁性酸化物を扱う機会があり、その経験を修士でも生かしたいと考えた際に、磁性薄膜薄膜の研究室として高梨研究室があり、選択しました。

松木 : 磁性材料はマグネットやモーターなど身の回りのあらゆるところで使われていることを学んでから漠然と興味を持っていました。金研の研究室を選んだ理由の1つに自分が他大学出身だったからということがあります。4年時に別の研究をしていた分、配属後に研究室内の同期と進捗に差が出てしまうことが不安だったのですが、金研の研究室のいくつかは修士以降の学生が選択できる研究室だったので、そういった心配をする必要がありませんでした。

修士課程の時に就職するか博士課程に進学するか迷われた経験はありますか。

迷いはなかったです。漠然とアカデミックな環境には向かないだろうという思いがありました。

どういったことを軸として就職活動をされていたか、教えてください。
 

職場での様子

三つの軸を持って会社選びをしていました。
一つ目は材料屋として働けるか、二つ目は海外に行けるか、三つ目は会社の雰囲気が自分に合っているかです。会社の雰囲気は会社説明会や工場見学の際、働いている人たちを見て確認していました。

またまたこちらから質問ですが、市村さんと松木さんは現在どういった研究を行っていますか。また、一年弱、研究を続けてきて、こういうのをやりたいとか、新しいテーマで何かこういうものが面白いのではないかというのはありますか。

市村 : 私は前年度からの引き継ぎでL10型構造のFeNi合金薄膜の研究を行っています。元々スピンなどにあまり詳しくない状態で高梨研究室に来て、研究内容もスピンとはあまり関係のない内容をやっていますが、大学院の授業でスピントロニクスの論文をいくつか輪読する機会があり、そちらにも興味を持ち、やってみたいなという思いはあります。

松木 : 自分は逆ホイスラー合金のスピン軌道トルクを評価する研究を行っています。 ゲームが好きで3Dモデルの動作等に興味があるのですが、それに関連して、柔らかい基板に磁性材料を成膜すると、体の動きに合わせてそれがひずむことで磁気特性が変化するセンサーになるという研究発表をみてフレキシブルデバイスに興味を持ちました。

私がなぜそのような質問したかと言いますと、会社に入ると若手でも意見を求められる機会が多々あるからです。大学時代からそういった意見を持つようにしておくと会社に入ってからも役立つと思います。

Chapter 3.
金研から社会人へ。社会からの期待は大。でも気負わずに
大学や開発部での研究経験が生産技術に生かされたということはありますか。

大学で勉強した材料学の基礎知識はもちろん生かされています。製品の品質改善を進めるうえで材料の知識は必ず役に立ちます。

金研にいたことが仕事上のメリットになったことはありますか。

金研の共同利用がそうです。仕事を進めていく上で、選択肢の一つに浮かんでくるというのは金研に入らないと分からなかったことだと思います。

金研の共同利用について詳しく教えてください。

他大学の人が金研にしかない装置を使用したり、金研の研究者と共同研究をしたり、と産業界の人も利用する仕組みが金研には昔からあります。特殊な装置は産業界でも仙台に来て、分析することが多いです。普通の研究室では教員が出てこないと何もできないですが、金研では技術職員が非常に充実しているのでなんでもやってくれる環境が整っています。

学生時代にもっとやっておけば良かったと思うことはありますか。

分析手法に関してもっと勉強しておけば良かったなとは思います。あとは「ミクロ組織の熱力学」(日本金属学会編)はとても難しい内容ですが、材料屋なら絶対に勉強しておいた方がいいなと、会社へ入ってからものすごく思います。

金研出身であるからこその期待を感じることはありますか。

やはり金研出身者に対して期待される部分もありますが、あまり重く受け止める必要はないです。むしろ入社してからどれだけ成長できるかの方が重要だと私は思います。

ありがとうございました。

ICHIMURA

MATSUKI

2021年1月インタビュー 高梨研究室 (市村、松木)

Profile
Yusuke INA

日本ガイシ株式会社 エレクトロニクス事業本部 金属事業部 生産技術部

東北大学大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻 博士前期課程修了(2017年) 金属材料研究所 磁性材料学研究部門(高梨研究室)

※所属はインタビュー当時のものです。

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